小説「仮面ライダー1971-1973」4
だいぶ間が開いてしまいましたが、小説「仮面ライダー1971-1973」の紹介、4回めは第3部「流星-1973-」編。
今回で一応最後ですが、例によってネタバレは極力避けますが以下同文。

一頃はエンターブレインでもアマゾンでも品切れだった様ですが、現在は重版されているみたいです。
性質上、元々発行部数はそう多くはなかったでしょうが(←失礼な言い方かも知れませんが、作者の和智正喜氏自ら言ってる事だし(^^;)それでも初版は全て完売となった訳ですから、やはりこれは「仮面ライダー」というブランド、特に“本郷猛の物語”としてのそれに、そしてこの和智版の小説に、それだけ根強いファンが存在する事の証しでしょう。

では本題。



完結編となる「流星-1973-」編ですが、前の2編とはスタンスがちょっと違う印象を受けます。
内容的には単に「仮面ライダー」としてだけでなく、様々な石ノ森作品の要素・・・例えばヨミ編以降の「サイボーグ009」であったり、「少年同盟」や「幻魔大戦」或いは「イナズマン」的なもの、果ては「クウガ」や「アギト」と言った初期の“平成仮面ライダー”を思わせるものなどが盛り込まれており、少し詰め込み過ぎな感はあるものの、色々な意味で“集大成”を目指している事は伺え知ります。

とは言え、読み難いとか分り辛いとかと言った事はなく、むしろ読了後に物足りない印象を受けるほど、サックリ読めてしまう。
これは多分「希望-1972-」とは対照的に、様々な要素を含みつつも基本となるストーリーは、殆ど1本道に近い、極めてシンプルな構造だからでしょう。
そういう意味では、むしろ「誕生-1971-」に近い作りと言えますが、物語の“質”は「希望-1972-」を踏まえた上でまた違ったベクトルを持った、ひとつの完成型となっていると言って差し支えないでしょう。

物語の核になるのはやはり本郷猛の物語。
この編の本郷は、様々な経験や紆余曲折を経た事で、戦士としても人間としてもかなり成長していて、TV版の「ゲルショッカー編」の頃の、非常に“男っぽい”本郷のイメージに近い印象を受けます。
ショッカーによって踏みにじられる、弱い命や幸せを守るために戦うと言うその信念は、もはや揺るぎないものになっていて、本作では更にそれが昇華され、確固たるものになって行くまでが描かれています。

そんな中、本郷の改造された身体にある“異変”が生じます。
その“異変”の意味するものや、理由・・・それこそが、本郷は勿論、この「流星-1973-」編の、中核となるテーマに通じてくるものなので、そこは是非御自身の目で確かめていただきたいところです。

そして、今回の物語の大きな幹となる部分を象徴する人物として“美崎百合子”という少女が登場します。
名前から言って、元になっているのは勿論“あの彼女”なのですが、本編の“美崎百合子”は改造人間でもなければタックルでもなく、当然変身もしません・・・が、しかし彼女は“電波投げ”(或いは“ウルトラサイクロン”)の様な“力”が使えてしまうのですが、それは何故か?

更に百合子だけでなく、万里子、ジュン、亮子と希梨子の双子姉妹等々、なにやら聞き覚えのある名を持つ少女達が多数登場(^^;
これも作者の和智氏自ら公言されている様に、TVシリーズのヒロイン達を始めとした、いわゆる“ライダーガールズ”を自分なりに(“賑やかし”じゃなく)ちゃんと描きたかったからだそうです。
そして、この少女達のリーダー的存在の“上野さくら”は、キャラクター自体はオリジナルなものの、元となったのは、TV版では“緑川ルリ子”の親友だった(演じた女優さんは後に世界的女優となった)“あの人”との事です。

そして、彼女達は全員が共通した“ある特長”を持っているのですが、そこは物語の中心となる重要な部分なので、詳細を書く事は敢えて控えますが、それが最初に書いた“「仮面ライダー」以外の石ノ森作品”的な要素を多分に含んでいる部分である事と、ショッカーに命を狙われる彼女達を守るために、本郷猛=仮面ライダーが立ち上がるというのが物語の基本である、とだけは記しておきましょう。

ショッカー側の新キャラクターとしては、新たな日本支部の局長として“将軍”のコードネームを持つ大幹部が登場・・・なんですが、正直ちょっとこの人はモゴモゴ・・・(いや、理由は実際読んでいただければ(^^;)

それ以上にショッカー側の新たな展開として、ミサイルやらマシンガンやらの“武器”を扱う改造人間の集団“Dチーム”(“D”というのは・・・つまり“そういう事”です(^^;)の登場が目立つところですが、これは「希望-1972-」の“G素体”のように物語に直接関わってはこず、強敵ではあっても雑兵の域は出ていません。

むしろ重要なのは、ショッカーの上層部すらその詳細は分らないという、ショッカーの上位組織“GOD機関”と、それら総てを支配する(つまり首領?)“彼”と呼称される正体不明の“存在”の登場。
そして“GOD機関”の作り上げた、完全な生身でありながら、改造人間を遥かに越える力を持つ存在“アポロ”との対決こそ・・・と、またこれ以上はバレ過ぎになってしまうので、控えておきましょう(嗚呼、でも書いちゃいたい!(^^;)

ドラマ部分では、本郷と緑川ルリ子の“互いに想いはあっても相入れれない”関係に、楠木美代子の“本心”めいたものが見え隠れするなど、決してそれがメインではないものの、ほのかな恋愛感情が“味付け”的に描かれており、恋愛物が苦手な私としてはこれ位が丁度頃合が良いです。
てか、元々この和智版「仮面ライダー」は“男くさい”ドラマがメインな作品ですからね(^^;

また、本郷と滝も本作では互いに信頼しあえる“バディ”としての関係が築かれていて、ここは正にTV版の2人の姿が目に浮かぶほど熱いものになっています。
また、この小説版では“仮面ライダーは本郷猛ただ1人”が原則な訳ですから、言わば滝は“相棒”という意味に置いては一文字隼人の役割も幾分担ってるところもあるかも知れません。

そして、忘れちゃいけないのが“立花藤兵衛”さん!
滝は元々の人柄から、砕けた会話で藤兵衛さんの事を“おやじさん”と呼ぶのですが、本郷はまだそこまでは歩み寄ってはいない。
その本郷が藤兵衛さんの事を遂に“おやじさん”と呼ぶシーンは、本郷、滝、藤兵衛さんの3人が自分達のよく知ってる“あの3人”として成立するところを見るようで、私がこの「流星」編の中で一番お気に入りのシーンです(^-^)b

他にネタ的ものとして、緑川教授の“遺産”というものが出てくるのですが・・・これはライダーファン的には思わず“ニヤリ”ながらも結局ネタで終わってしまう・・・と、思いきや実は!、みたいなものなのですが、これも見どころには違いないので、楽しんでみて下さい(^^)

そしてそして、ある意味一番“キモ”かも知れないのが、エピローグ。
あのエピローグをどうとるのか、どう読み取るのかは多分読者1人1人によって違うと思われますが、しかしそれこそが和智氏がこの大長編小説に込めた「仮面ライダー」への想いであり、読者へのメッセージなのだと思います。

確かにその厚さとページ数故、敷居が高いように感じられるかも知れませんが、でも本郷猛=仮面ライダーに対してある程度の想いのある人ならば、必ず心を揺さぶられる作品である事は間違いありません。
是非その想いやメッセージを、自らの目と心で受け取ってみて下さい!


仮面ライダー 1971-1973

石ノ森 章太郎 / エンターブレイン


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by yaskazu | 2009-03-19 21:55 | 仮面ライダー | Trackback | Comments(0)
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