小説「仮面ライダー1971-1973」3
小説「仮面ライダー1971-1973」3回目の紹介は、第2部「希望-1972-」編。
これまた、重要な部分のネタバレは極力控えるつもりですが、以下同文(^^;



この「希望-1972-」編は、本郷が仮面ライダーとなってから約1年後の物語となっていますが、全体を流れる空気が本来の「仮面ライダー」とはちょっとテイストが違った、ハードボイルドサスペンス風という趣きで、むしろ藤岡弘氏が主演したドラマ「白い牙」の様なイメージになっており、ちょっと“やさぐれて”ワイルドになった本郷像も、同ドラマの主人公“有光洋介”を彷佛させます。
これについては、講談社版の「希望-1972-」を読んだ際に、私が作者の和智正喜氏御本人に“そう感じた旨”を当事の和智氏のHPのBBSにて伝えたところ、実際に執筆当事にCSで放送されてた「白い牙」の影響を受けたという直々の御回答をいただきました。

しかし物語の密度は、恐らく3部作の中では最も充実していて完成度も高く、読み終わってみればこれは紛れもなく「仮面ライダー」だと呼べる仕上がりになっていて、私自身も3編の中ではこの「希望-1972-」編が一番面白いと感じました。
また、この編より“緑川ルリ子”“立花藤兵衛”そして“滝和也”という、ファンには馴染み深い方達も続々登場し、その活躍ぶりもポイントのひとつ。
但し、滝に関しては実はちょっと“仕掛け”があるのですが、それは実際に読んでみてのお楽しみと言う事で(^^;

前のエントリーでも述べた様に、「誕生-1971-」編が本郷猛が仮面ライダーに“なってゆく”物語がメインストーリーで、間に挿まれるサイドストーリーは直接本筋には関わらなかったのに対し、この「希望-1972-」は、幾つかのストーリーが同時進行的に展開され、それらが相互に関わりあいながら大きな物語を形成するという構成になっていて、そう言った点でも読んでいて飽きを感じません。

中心になるのは勿論、本郷猛=仮面ライダーのストーリーですが、前述の様にこの編における本郷はちょっと“やさぐれて”ます。
ショッカーに取って代わる事を目的とする“アンチショッカー同盟”に対し、あくまで“人間を守るために”力は貸すものの、決して同盟からの金品的、生活的な支援は受けようとせず、普段は日雇い人夫(!)として食いぶちを稼ぎながら、他人と深く関わろうとせずに生きている(これは本郷自身がショッカーから“狙われる身”だからなんですが)というところからして既にやさぐれですが、それだけが理由じゃない。

プロローグで戦っていたショッカー怪人“モスキート”は、ライダーの超感覚を持ってしても捉えられないほどの俊敏さを武器とし、ヤツに目の前で保護対象だった人物をむざむざ殺されてしまった上、逃走を許してしまう。
それまでも守りきれなかった命は幾つもあるけれど、眼前で救えるはずだった命までをも救えなかった敗北感と無力感がある種のトラウマとなり、それが“やさぐれ本郷”に拍車をかける一因となっていて、それを克服して本郷猛=仮面ライダーが再び立ち上がり、モスキートを倒すまでが、言わば本筋。

もうひとつ進行する大きなストーリーは“緑川ルリ子”に纏わるもの。
ただ、これについて詳しく書いてしまうのは、それこそ本作の核心部分のバレになってしまいそうなので、概要のみを。
緑川ルリ子は、緑川教授の1人娘という以外はTVとも原作とも大きく設定が異なり、本人が知らなかったところで実は生まれながらにショッカーと関わりがあった人物となってます。
そして、その出生故に“ある人物”の依頼によってショッカーから命を狙われる事となり(狙っているのは本郷の“やさぐれ”原因になったモスキート)彼女に興味を持った“蛇姫・楠木美代子”を介してルリ子の事を知った本郷が、彼女を守るために動き出す事になります。

ルリ子のキャラクターも、原作やTV版以上に“強い娘”的な印象が強く、世間知らずのお嬢様だった彼女が、自分の運命を受け入れ、立ち向かい、やがて切り拓いてゆこうとする姿はちょっと感動的で、ある意味“やさぐれ本郷”との対比にもなってるようで、面白いです。

ただ、本郷はルリ子に対して彼女の父親を救えなかった事を、ルリ子は自分の父が本郷を“怪物”にしてしまった事を互いに引け目に思い、決して2人が恋愛感情に発展しない、相入れれない仲だという辺りはちょっと切なかったり・・・

更にもうひとつ、大きな軸になるものとして“G(ゲルダム)素体”のエピソードがあります。
これはショッカーの実験段階だった新しいタイプの改造人間(“ゲルダム”の名からどんなものかは察せられるでしょう)が、「誕生-1971-」編のクライマックスでのショッカーの箱根基地陥落の際に逃げ出したももの、不完全であるが故に殆どの自我を失い、方々で無差別殺人を続けながら放浪していて、それはショッカーにとっても好ましくない事態。
で、驚くべき事にショッカーは、このG素体の捕獲ないし抹殺を、逃走した原因は基地を潰したからだという理由で・・・まぁ責任とれやって事で、本郷に依頼してくるんですな(G素体と戦える力を持つのは“仮面ライダー”だけだからでもあるんですが)

G素体を野放しにする事は、罪もない人間の命が無闇に奪われる事を意味するため、断腸の思いで本郷は“ショッカーからの依頼”を受ける事になる。
しかしこのG素体は、実は緑川ルリ子殺害をショッカーに依頼した人物に強い私怨を持っていて、殆ど失われた自意識の中、その人物への復讐心と殺意だけは明確に生きている。
G素体にその人物が殺されれば、緑川ルリ子への殺害依頼は解消されるかも知れない。
しかし、G素体を放っておく事は出来ないし、例えそれがどんな人間であれ、むざむざ殺されるのを見過ごす事など、本郷にはできない・・・
この事が、本郷を更に葛藤させ、苦しめる事になります。

そして、ここにショッカーの大幹部“大使”・・・本名“田中一郎”の双子の弟“田中二郎”という人物が登場。
実は田中二郎は“アンチショッカー同盟”の日本支部の世話役、つまり2人は兄弟で敵対しあってる組織の幹部同士
ショッカーは緑川ルリ子の命を狙っていて、そのショッカーが本郷に抹殺を依頼したG素体はルリ子の殺害をショッカーに依頼した人物を狙っている。
更に、本郷はルリ子保護の協力をアンチショッカー同盟に求め、更に更にG素体の件に関して敵対組織な筈のショッカーとアンチショッカー同盟は裏で・・・・
と、物語が複雑な様相を成して行く中、本郷はどう立ち向かい、どう戦い抜くのか?
緑川ルリ子を守り抜き、G素体を、そしてモスキートを倒す事はできるのか!?

そしてそして、やはり触れておかねばならないのは“立花藤兵衛”の存在。
藤兵衛さんも設定は大きく異なっていて、本郷とは元々面識はなく、むしろルリ子さんと縁りのある人物として登場します。
しかし、そのキャラクターの描写はもう紛れもなく“小林昭二”さんの演じた、あの“おやっさん”そのもので(アミーゴもちゃんと出てくる!)読んでいると頭の中で“おやっさん”があの声で豪快に笑い、あの顔で語りかけてくるように思えてきます(^^)
そして“おやっさん”は、やさぐれが頂点に達して自暴自棄になりかけてる本郷が、再び立ち上がる力を得るための重要な役目を勤めます(このあたりが正にもう“おやっさん”なんだよなぁ!)

また、それに関しては“滝和也”も同様の役目を果たすために登場しますが、滝がどんな登場の仕方をするのかは、先の“おやっさん”の役目を含め、是非御自分の目で確かめて下さい。
胸が熱くなる事、確実です!

最後に、この「希望-1972-」編では、ある有名なアメリカ映画の名作がキーワードになっています。
そういった部分も、お楽しみのひとつなので、是非御一読を!

さて残すは書き下ろし完結編の「流星-1973-」のみですが、実は今“2度目”を読み始めたところなので、更新はもう少しお待ち下さい(^^;
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by yaskazu | 2009-03-08 23:40 | 仮面ライダー | Trackback | Comments(0)
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