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小説「仮面ライダー1971-1973」2
さて小説「仮面ライダー1971-1973」の紹介2回目は、第1部の「誕生-1971-」編。
重要部分のネタバレは極力避けるようにしますが、もし筆が・・・てかキーボードが滑っちゃったらゴメンなさい(^^;



「誕生-1971-」は、文字通り本郷猛が仮面ライダーに“なって行く”までの物語で、ヒーローの誕生物語と言う意味ではハリウッド版「スパイダーマン」の1作目や「バットマン・ビギンズ」的なものと言っていいし、また3部作の中では一番オリジナルのテレビシリーズ(特に「旧1号編」)や、石ノ森原作コミック版の“匂い”に近い気がします。

主人公の本郷猛は、TVシリーズ最初期のナイーブな青年科学者といった部分ががより強調された人物として登場し、なんと最初はオートバイに興味がないと言うか、乗れなかったり(!)
頭脳明晰もスポーツ万能も、決して天才だからではなく、親代わりに育ててくれた歳の離れた姉に誉めてもらいたいから・・・苦労をかけた分少しでも早く楽をさせてあげたくて努力して身につけたもの(但し、先天的な素養は持っていた模様)なのですが、その甲斐もなく姉は先に旅立ってしまった・・・
この辺りが、本作の本郷の根底に流れるものとなり、物語の中で後に大きな意味を持ってゆく事になります。

本郷猛が蜘蛛男の“群れ”(!)に襲撃され、ショッカーに捕縛されて改造人間にされてしまうまでの流れは概ね原作を踏襲していますが、ここで本郷を罠に掛けショッカーに誘う存在として“楠木美代子”という人物が登場します。
“美代子”という名前や、彼女のコードネーム“蛇姫”から、元となったキャラがお分かりの方もおられるでしょうが、ただ彼女は改造人間らしいけれど怪人体にはならないし、ライダーと戦う事もありません。
永遠の若さを保ちつつ、ターゲットをショッカーに誘ったり、スパイ活動をするのが彼女の主な使命で、役割“だけ”を見ればむしろ“メーテル”的?(キャラは全く違うけどね)

最初の案では美代子の役割は実は緑川ルリ子だったそうですが、原作のヒロインが悪側の人間ではさすがに問題あるだろうって事で作られたキャラだそうです。
この楠木美代子は、3部作通してかなり重要なキャラとなって、深く物語に関わって行く事になります。

あ、緑川ルリ子さんは第2部「希望-1972-」編から、ちゃんと登場しますよ〜。

他にショッカー側の登場人物として、各々“大使”“博士”“大佐”のコードネームを持つ方達が登場しますが、やはりテレビ版とは設定やキャラが少し異なります。
バレになってしまうので詳細は控えますが、この中でライダーと戦うのは大佐のみ(勿論“あの怪人”に変身して)です。
ただ、大佐のキャラクターはTV版のゾル大佐を一応踏襲しながらも、それを遥かにイマジネーションを膨らませた、非常に“味わい深い”ものになっていて、ここもこの小説の大きなみどころとなっています。

博士は特種な羊水の中以外では生きられない年齢性別不詳の存在で、量子コンピューター2台分以上の計算能力と知識を持つショッカーの“頭脳”であり、ショッカー最大の財産という存在ですが、結局シリーズ最後まで本郷と直接対面する事はありません。

大使に至っては怪人体どころか改造人間かどうかもよく分らない(一番“怪しい人”ではあるが(笑))けど、議員秘書として政界に入り込んで影から操り、ショッカーと日本政府のバイパス役を担う文字通り“大使”という役割。
悪役なのにどうも憎めないという意味では、一番テレビ版の地獄大使に近い(描写も潮健児さんが頭に浮かびそう(笑))のですが、設定上“あんなイカレた”格好はしていません(いや、ある意味イカレた格好なんだが、そこは読んでのお楽しみって事で(w)
この人も3部作通して、物語に華を(華?(^^;)添える事になります。

ショッカーに対抗する目的で本郷を改造し、脱出させるものの結果的に殺されてしまうのは、原作通り“緑川教授”ですが、そこに介入してくるのが前に紹介した“アンチショッカー同盟”であり、更に「誕生」編で最も重要な役割を果たす“ハヤト”という、本郷と同年代の青年が関わってきます。
名前から分るように、正に彼は“あの人”なんですが、彼に関する詳細を書くのは、この「誕生」編最大のキモをバラしちゃうのも同じなんで、少しだけヒントとして書けば、緑川教授の開発した最新型改造人間の中で、成功したのは本郷猛だけという事、そして石ノ森原作コミックとは逆転してるって事でしょうか。

改造され、怪物のようになってしまった自分の肉体や運命を受け入れられず、信じていた楠木美代子や緑川教授に裏切られた事実に悩み、苦しみ、絶望する本郷に生きる道と希望を与え、本郷自身を自分の希望だと言うハヤトとのやりとりは、この「誕生」編の大きな読みどころのひとつ。
そしてそれが最大限に昇華するのは、ショッカーによって自我を失い暴走“させられた”本郷とハヤトの1対1の対決シーンで、ここは2人の命を懸けた魂の戦いが、熱く、深く、描かれていて、まるで映画を観ているかの様に胸に迫ってきます。

紆余曲折の果て、ハヤトの思いと、彼が本郷に与えた“ショッカーと戦う時の名”を「俺達2人の名前だ」とし、その象徴としてハヤトのものを譲り受けた“赤いマフラー”を巻いた本郷が“仮面ライダー”となる一連の流れは非常にドラマチックで、涙腺を刺激します。

更に、最終決戦となるアンチショッカー同盟が予てから計画していた、ショッカーの箱根基地襲撃に同行した“仮面ライダー”と、ショッカー日本市部総司令の“大佐”との対決は、正にクライマックスといった描かれ方で、文字の中の世界に自分が居るかの如く引き込まれてしまい、和智氏の文章力に思わず感服しました(^^;

以上が「誕生」編のメインストーリーの大まかな流れですが、各々のキャラクター間で繰り広げられるドラマや、主な舞台となる“お化けマンション”に、改造人間やサイクロンの設定等々、多岐に渡る様々なディティールの緻密な描写等は、実際に読んで頂かなければ伝わりませんので、是非買って読むべし!

他の登場人物として、アンチショッカー同盟のコマンド隊長神原という、寡黙で味あのる人物が登場し、その部下である“弐番”が、第2部「希望」編で、実はライダーファンにはお馴染みな“あの人”だった事が判明すのですが、それはまた「希望」編の紹介の時に。
ショッカー側では、大使の運転手の榊原君や、博士の忠臣とも言える御子柴君辺りが、全3部通して非常に味のあるバイプレイヤーぶりを見せてくれます。

そして、この「誕生」編には本編とは別に、プロローグから始まる“インターミッション”と名打ったサイドストーリーが進行するのですが(大久保清なんて名前が・・・(^^;)、それがエピローグで本編と繋がった時、本当の意味で仮面ライダーの誕生物語として完結する構成は、さすがプロの小説家の作品だと思わせて、実に見事でした!

そんな訳で、以下第2部「希望-1972-」編へ。
by yaskazu | 2009-03-03 23:49 | 仮面ライダー | Trackback | Comments(0)
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