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お金の使い方
書こうかどうか、何日も迷っていた話題(実は今もちょっと迷ってる)
しかし、やはり自分の中でモヤモヤしてるものは吐いておいた方が良いと思うので、思ったことを少々・・・(ニュース記事へのリンクは、敢えてしません)

タイトル通り、お金の使い方の話題2つ。

まずひとつは、何かと話題の「定額給付金」の使い方に関し、大阪府の橋下徹知事の出した案。

年収400万円以上の人には受け取りを遠慮していただき、それで浮いたお金は大阪府と府下の小中学校の耐震補強工事の費用に充てる。
更に、その年収400万円以上の世帯を調査するための臨時職員を、府と府下合わせて4000人程度一般から採用し、報酬はそれぞれの役所単位で残業カットなどの“ワークシェアリング”を行って捻出するというもの。

知事の狙いとしては「定額給付金」の使い方を地方自治体が決める事で、知事の念願の地方分権の足掛かりにすると同時に、学校の安全対策と産業の活性化、雇用問題や景気対策といった諸問題を連動で解決していく事。
そしてワークシェアリングを役所や役人が率先して行う事で、その考え方を一般にも理解浸透してもらう事や、臨時雇用した一般府民に役所内のワークシェアリングで捻出したお金で報酬を払う事で、頂いた税金を府民になんらかのカタチで少しでも還元しようという考え等があるようです(その辺りは大阪ローカルの番組では、知事自身が明言してました)

もうひとつは、東京都が雇用対策として打ち出した案。

派遣切りに遭った失業者を対象に、介護職への就業支援と、そのためのヘルパーの資格収得のための受講料10万円程度を全額負担する制度を設け、その制度を使って資格を修得した人材を採用した事業者には、60万円程度の助成金を出そうという話。

これによって派遣切りで路頭に迷ってしまった人達の雇用確保と、人材不足に苦しむ介護や福祉の現場への人員補充と活性化の一石二鳥を狙った案ということらしいです。

どっちもどっちな部分はあるのですが、橋下案が実現性は低いけど現実に則してるとすれば、東京都の案は実現性はあるかも知れないけど現実を見ていない。
或いは、橋本案が“貰ったお金をどう使えば問題解決に繋がるか”なのに対し、東京都のそれは“お金をどう与えれば問題が片付くか”で、両者は似ているようで全く違う考え方・・・ってのが私の印象。

なんでそんな風に思うかって辺り、もう少し詳しく・・・



先ず橋下案については、個人的には結構有効なプランだと思うのですが、政府からは「定額給付金」は指定された目的以外に使ってはならない、残った分は政府に返却するのが決まりだという事で、取りつく島もなく却下されたそうです。
元々が地方自治体に運用を丸投げしておきながら、自分らの意向に反する案に対してはこの言い様ですから、さすがの暴れん坊知事も、これには怒りを通り越して苦笑するしかなかった模様(ニュース等で流れた「バカですね、永田町は」っていうのはこの事なんですな)
幾ら現実的には有効と思える案でも、却下された以上は実現は難しい。

一方の東京都の案は、ちょっと見ぃはいいプランにも思えるのですが、なにか違和感があるというか、本当に有効に働くかって事に、自分としてはかなり疑問が残ります(理由は後述)
こちらもまだ決定ではないとの事ですが、16日辺りに正式発表するって事は、多分もう事実上の決定事項なんでしょう。
どれだけ疑問の残るものでも、事実上決まっている事なんだから実現性は高い。

で、なんでこの東京都の案に疑問があるのかと言えば、これが今回騒ぎになってる“派遣切りに遭った人が対象”ていう一節が、正しく現実を見ていない証拠だから。
一見良い救済法に見えるかも知れませんが、あの人達は今日明日の生活や住処が成り立たない上に、その多くは“製造業”で働いてた人達な訳で、そんな人達にこれから介護の仕事に就くための“勉強をするお金”をあげましょうってのは、なんともトンチンカンな気がしてなりません。
また(こういう言い方は失礼かも知れませんが)今日1日を生きるか死ぬかの人達が、今更勉強して介護や派遣の仕事に就こうなんていう史生な人がそう多くいるとも思えません。

それとも、自分が辛い目に遭ったのだから、弱い立場の人達に少しでも役立てる様にと福祉の精神に目覚めるなんて、そんなおめでたい・・・もとい素敵な人達がわんさか出てくるとでも思ってるのでしょうか?
もし仮に、そんな心構えで現場に来ようって人が居たとしても、私が施設の人事なら採用を躊躇うかも知れません。
理由は簡単、あの仕事がそんな“きれいごと”で勤まるとは思えないから。

ある方が御自身のブログで、同種の話題を取り上げられてた時に私がコメントした事ですが、特にこの介護や福祉と言った職種は“人が仕事を選ぶのではなく、仕事の方が人を選んでしまう”という側面は否めないと思うのですよ。
他人様の(「下」も含めた)“お世話”をするというのは、相当の覚悟と忍耐力、精神力と体力が必要だと思うし、多分生半可な土木工事よりもキツイ肉体労働を強いられる。
とても一朝一夕や付け焼き刃で出来るものではないし、やられたんじゃ現場や当の要介護者とか障害者の人が迷惑しちゃいます。

こんな風に書くと、立場考えろとか、贅沢言うなとか、甘えんじゃない、なんて意見も出てくるでしょうが、それは違う。
求職側は、表向きはどんな仕事でもいいと言っても、本当になんでもいいって訳にはいかない
求人側も、誰でもいいから人手が欲しい、とにかく来て欲しいと言いながらも、本当に誰でもかれでもいいって訳にはいかない
こんな大変な事態だからこそ、互いに失敗は許されないから、お互い選んでる場合じゃないけれど、やっぱり選ばざるを得ない

その上で尚、現場は人手は欲しいし、失業者は仕事が欲しいからこそ、双方共にジレンマや葛藤に苦しんでるというのが、多分現実でしょう。

そしてこれは介護や福祉に限った事ではなく、全ての職業に対しても言える事でもあり、また求人と求職の需要と供給には最初から本質的についてまわる事ですが、以前は双方の妥協なり納得なりで保たれていたその辺りのバランスが、10年前の不況の大リストラ時代や就職氷河期以降、崩壊してしまった。
それを取繕うために小泉内閣が行ったのが、派遣労働法を含めた各種の規制緩和や改正だったのでしょうが、ちゃんとしたフォローやバックアップを整えないまま法制化しちゃった事が、結果的に今の事態に繋がってしまった。

その辺りの事をちゃんと把握し、問題の起こりそうな部分の対策等を整えた上で施行しなければ、結局失敗したと言わざるを得ない各種の規制緩和と、また同じ事を繰り返す事になりかねないし、それらを差し置いて「取り敢えずお金さえ与えれば」的なものであるなら、それこそただのバラ巻って批判されてる「定額給付金」となにも変わらない。

雇用や福祉だけでなく、政策の不備による同じ様な問題は、年金に保険や医療等でも噴出しているというのに、ホント学習能力が無いのかアンタらは・・・(^^;

例えばですが・・・
もしこれが、家族に要介護者が居るからその為に役立てたい、誰かを介護した経験を何かに生かしたい、本当に介護や福祉の仕事を真摯に目指してるとかいった、ちゃんとした動機や志はあるのに、経済的な余裕が無くて勉強をしたくても出来ないような人達を主な対象として援助し、それ以外にも派遣切り等で仕事を失った方で、介護や福祉に興味のある方も含みましょうって事なら、私も賛成したと思います。

それを“派遣切りに遭った人対象”なんて限定して言っちゃうのは、今正に福祉関連の仕事を目指してる人、現行でその現場で働いてる人、そして実際に派遣切りに遭った人達、全てに対して相当に失礼だし、結局現実をなにも分かっていないと思わざるを得ない。
何より、最もそれで割を喰らうのは、当事者である要介護の人達だってのが一番忘れられてる辺りが、何よりも気に食わない。

勿論、それで1人でも成功する人が居れば、成果はあったと言えるのかも知れませんが、それでもリスクの方が圧倒的に大きい気がします。
そんな回りくどい事するお金があるくらいなら、素直に介護や福祉に回す公的なお金を増やしてくれた方が、現場はありがたいんじゃないか。
国や自治体が直接失業者を、適材適所な仕事に就ける対策を立てる資金にしたほうがいいんじゃないか・・・なんて思ってしまうのは、シロウト考えでしょうか?

そんな訳で、ちょっと長くなってしまいましたが、お金の使い方や雇用問題の現実について、改めて“上の人”との思考の温度差を感じてしまった話題でした。
by yaskazu | 2009-01-14 20:33 | 社会 | Trackback | Comments(0)
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