コルトSAA・ピースメーカー 例の件でちょっと有名になってしまったタイプの銃ですが、写真の物は「タナカ」の製品ではなく「ハドソン産業」というメーカーの、ガスガンではなく“モデルガン”で、私のコレクションの中でも、特にお気に入りのひとつです。 大きな画像はコチラ ABS樹脂に金属粉を混ぜて精製したヘビーウェイト素材製で、重量や質感が実に“いい感じ”・・・なんて書いたらなんか“ヤバそう”に聞こえるけど、プラスチックに金属って不純物混ぜてる訳だから、実は普通のABSプラよりも強度は低くて壊れ易いのですよ。 モデルガンなのでBB弾は飛ばないし、キャップ火薬は使うけど駄菓子屋の“巻弾鉄砲”に毛が生えた程度の音と火花が出るだけで、精々漂う硝煙の匂いで“雰囲気”を味わう程度の、ある意味ガスガンよりも他愛ないシロモノ。 そのキャップ火薬の発火も殆どやらず、1年に1回とか数年に1回、思い出した様に箱から出して、手に持って眺めて触ってニヤニヤしているだけ・・・(え、気味悪い?(^^;) ピースメーカーは西部開拓時代に活躍した最もポピュラーな銃ですが、なにか今の近代銃が失ってしまった“道具としての存在感”や、ある種日本刀とも通じる“美術工芸品”的な美しさを持っていて、そこにとても魅かれます(とは言え、ゴタゴタ彫刻してあったり、アホみたいに銃身の長いのは趣味悪くて好きじゃない) 勿論、銃である以上はどれだけ綺麗事や御託を並べても、所詮は人殺しのための武器に過ぎないんですが、だからこそ火を吹かずに黙し、ただ存在してるだけで“凄み”を放っていて、何かを語りかけてくる・・・ その静かに佇んでる姿こそ、真に“ピースメーカー”の名に相応しいと思ってるし、このモデルガンを通じて、それを感じるのが私は好きなんです。 実は、私がこのエントリーを準備してたのは、例の「カシオペア」の一件が起きる前で、本当に偶然、あの数日前にふと思い立って、久しぶりに棚の上の埃の被った箱を降ろして、一頻り触った後にせっかくだからデジカメに撮ってブログに載せようとしていた頃に、テレビのニュースで今回の騒ぎを知り、妙な“因縁”みたいなものを感じて、ちょっと腰入れて記事を書こうと思った訳です。 そして、記事を書くために他所様のブログとかを検索してて、事件以上に気になった事がありました。 それは・・・ 今度の事件で、警察や報道に対して不満を漏らしたり、怒りを見せたり、嘆いたりするユーザーやマニアは多数いましたが、でもそれだけで、それ以上の必要以上な過剰反応を見せたり、罵詈雑言を吐く様な者が殆ど見られなかった事。 いや、勿論暴れるのがいい事だとは思いませんが、良く言えばガンオタやマニアは理性的で思慮深い人が多いとか、達観して大人の態度で受け入れてると言えなくもないけど、どうも自分の印象としては、諦めてると言うか、心が折れてる、抗う気力を失ってるといった風に映ったのですよ。 多分それは、ガンマニアと警察、世間一般との関係の長い年月の歴史に起因する事なのかも知れません。 日本の場合、ガンマニアといっても基本的には“トイガン”・・・文字通り“玩具の銃”を愛好する者を指すのが普通で、子供の頃の銀玉鉄砲やコルク弾飛ばすブリキの鉄砲を撃ってた感覚が、そのまま大人になってよりリアルな玩具であるモデルガンやエアガン&ガスガンに向いて行っただけで、そういう意味では車やバイクや女の子(笑)に興味が行く感覚と、何も変わらない。 中には免許を取得して猟銃や空気銃を持つ人もいますが、それらは職業や競技とかにも関係するので、趣味とはまた別の話になってきます。 しかし、例えそれが玩具であっても、銃である事の特性は、残念ながら事件や犯罪に直接繋がってしまうのも事実。 一部の悪質なマニアやメーカー、そもそもマニアでもなんでもない不埒者や犯罪者、暴力団関係者等によって、違法に改造されたモデルガンやガスガンが事件を起こし、世間を騒がせる度に法規制や警察の締め付けは厳しくなり、その都度ちゃんとマナーもルールも守って趣味に嵩じてる“だけ”の、多くの良識ある一般のファンやマニアは辛酸を舐めてきた。 そして、それが玩具であっても“銃”という存在故に世間一般(特に日本の土壌では)からの理解も得られず、肩身の狭い思いをしながら生きてきた歴史の深さは、多分想像以上のものでしょう。 そこでこの「カシオペア」の騒ぎ。 今度の件は、「ASGK」が証明を見送ったものの、「タナカ」が万全に近い安全対策を施し、誰もが“これなら大丈夫だ”と確信していた製品であり、更にそれが使われた事件はまだ一件も起きていない段階で、“改造出来るかも知れない”という、半ば言い掛かり的な理由で起きてしまったものでした。 「あれがダメなら今あるトイガンは全部ダメになってしまう」 それは「タナカ」の社長だけでなく、殆どのガンマニアの叫びだったと思いますが、それでもファンが署名や嘆願書等の運動に出ないのは、そんな事をして国や警察から 「じゃあ、本当に全部ダメにしてやろうか」 って態度に出られ、またこれまでの経緯から考えれば、本当にそうなりかねない事・・・自分達のささやかな楽しみをこれ以上奪われてしまう事、そして世間の目から増々肩身の狭い思いをしなければならない事を、恐れてるから。 その気持自体は、正直痛い程よく分かります。 特ヲタ&アニヲタとしても、あの“M君事件”以降は本当に辛い日々が続いたもんです。 あの事件の前は、自分が大人になっても特撮やアニメが大好きな事を堂々と公言してたし、その面白さや素晴らしさを俺が世間に広めてみせよう、なんて本気で思ってた(我ながら今思えばイタイ(^^;)のが、事件以降は正に一転してしまいましたからね。 今でこそ“宮崎駿”“ジャパニメーション”“イケメンヒーロー”等が幸いしたのか、アニメや特撮作品はある程度社会に認可されてきたように思いますが、それはその“ジャンル”が認可されただけで、世間の“オタク”に対する偏見は、実は今でもあまり変わっていない気がします。 例えは悪いけど、オバマ氏が大統領に当選しても、多分あの国の白人が黒人に対して向けてる視線は、根本から変わるとは思えない・・・ 良い悪いではなく、それが人間の本質です。 私達の世代のオタクは、少なくともまだ表に向けて自分を放って行こうとしていた気がしますが、今の若い世代やアキバ系のオタ君達が、何故か自ら自分の周りに線を引いて、内に向かって隠ろうとする様に見えるのは、そういう“オタクに対する世間の視線”が悪い意味で定着してしまった後の世代だからかも知れません。 今回の「カシオペア」の一件は、単にガンマニアの世界だけでなく、今のオタク社会と世間との関係そのものについて、今一度考える切っ掛けにもなった気がします。 私は思想家でもなければ市民運動家でもない、ただの中年ヲタに過ぎませんし、ブログにツラツラ書いてる事も、所詮はくたびれたオヤジのぼやき言以上のものではありません。 けど、例えそんな程度のものでも、自分の言葉や文章には責任や自信をもっているつもりです。 ヲタだろうがなんであろうが、納得のいかない事は納得がいかないと言うべきだと思うし、自分に後ろめたいものがなければ卑屈になる必要なんて絶対ない筈です。 互いに理解しあえなくても、分かりあえなくても構わないし、多分人同士は本来分かりあえない存在。 けどそれを分かった上で、争いの無い“良い関係”を作り、続けていく事は出来るはず。 オタ社会と世間とが、いつかそんな関係になればいいのになと、本当に思います。 ピースメーカーが、火を吹かずに黙して佇んだまま、その名を示し続けられますように・・・・
by yaskazu
| 2008-11-18 23:32
| 社会
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