踊る大買収劇
先日のエントリーで触れた様に、円谷プロが経営立て直しの為に、半ば身売りの様なカタチで別の映像会社の傘下に入ったそうですが、それについての会見が先日行われたのですが、その時のこの新しい親会社の社長の発言がどうにも気に入らないというか、少なくとも古くからの特ヲタにとっては結構聞き捨てならないものでした。

詳しくはこのヤフーの関連ニュースの一覧や、ブログ検索、動画検索等で関連の話題を参考にしていただけると有り難いです。
私は先日の土曜の朝の関西ローカルのバラエティでこの時のニュース映像を見て、初めてこの発言を知って頭にきて、ネットで検索して改めてこの話題を知り、この話題で嘆いておられたよそ様のブログのコメント欄でもかなり感情的に吼えてしまいました(^^;

で、同じ吼えるなら自分のところで吼えるべきだと思いつつ、感情のままに書いちゃうのも大人気ないので、少し頭を冷やしてから客観的に書いた方が良いだろうと思って、取り敢えず1日間を置く事にしたのですが、今日夕方の報道番組「バンキシャ!」を見ていたら、またもやこの会見の映像が流れて・・・
あぁぁああぁあ〜〜〜、やっぱり腹がたつ!!

しかし、そこを敢えて抑えて見てみる事にすると・・・




この社長さんの言ってる事は実は間違っちゃいません。
円谷がここまで経営難に陥ったのは、これまで続けてた親族経営や伝統技術、一定以上の品質や作品の完成度を死守しようとする、ある種の信念や理念を貫いてきた事が全て“負の遺産”として裏目に出てしまった事で、それは私らの様な蚊屋の外のファンの耳にすら、うわさ話としては聞えてきていた事です。
ただでさえ特撮はお金がかかるのに、円谷のやり方は正に自分で自分の首を絞める行為だったと言うのは、そういう意味では正論過ぎるくらい正論です。

デジタル至上主義な考え方や、先人の歴史や功績を蔑ろにしてるとしか思えない物言いに、何よりも古くからのファンや、ヲタ・・・つまり我々“お客さん”を見下してるともとれる発言の数々には、本当に言い尽くせないほど言いたい事が無限のごとく溢れてきそうです。
そこを百歩、千歩、万歩譲り、感情を抜きにして見てみれば、確かにそれでもこの人の言ってる事は間違っちゃいない、それは認めます。

では、その感情論を抜きにして、正しい事を言っているという前提の上で改めて見てみても、どうしても納得がいかない、釈然としないものが残るのは何故なんだろうと、色々考えてみたのですが、私が引っ掛かったのはこの部分。
「CG合成の方が、よりリアルなものが安価でできる」
・・・・ちょっと待て、この人は自分達の仕事を“その程度”にしか思っていないのか!?

確かに、CGを駆使した方がリアルな映像が(少なくとも実写でやるよりは)安価で出来るでしょうが、そのリアルな映像を作るのは実際に現場で仕事をするクリエイター達で、その人達はそのリアルな映像を作るためのスキル、少なくともプロの仕事として通用するレベルのものを身に付けるまでには相当な勉強や苦労もしてきた筈、どんな技術だって決して一朝一夕で出来るものは無いでしょう。
しかも、それを“安価で”と言ってる意味を深読みすれば、そういう“素人には出来ない”スキルを持った人達は、決してそれに見合った報酬を受けていない・・・と、とる事も出来ます(てか、ちょっぴりだけ裏側知ってる人間としては、それは事実だぞと・・・(^^;)

ああ、そうか・・・この人は“現場の仕事”を分かっていないんだ!
それが、私が感じた“釈然としないもの”の本質の様です。

ちょっと話は逸れますが先週と今週、10周年記念という事で「踊る大捜査線」シリーズの映画を、スピンオフ作品も含めて連続してやっていました。
「踊る」は個人的にも好きな作品で私も観ていたのですが、このシリーズの一貫したテーマとして“現場の警察官と、官僚達を始めとする警察上層部の確執や温度差”ってのがあります。
現場で走り回り、傷つき、時に命の危険にまで晒されながら働いても、結果的には駒や道具のようにしか扱われないばかりか、命令に背けば例え正しくても処罰される・・・
「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ!」
は流行語にもなりましたが、正に「踊る」を象徴する言葉でしょう。

さて、なんで「踊る」の話を持ち出したかはもうお察しでしょうか?
この社長さんの考え方は、正に「踊る」の中の会議室の官僚達と同じって事です。

この人は多分、御自身の仰る“リアルで安価な映像”を作ってる現場で、四六時中モニターとにらめっこし、マウスを走らせ、キーボードを打ちながら、ドライアイやら腰痛やら腱鞘炎やら痔なんかに苦しみながら仕事してるオペレーターの気持は多分理解していない・・・
下手したら“遊んでお金貰えていいなぁ”とすら思ってるかも知れない(←や、これは半ば私情が入ってますが(^^;)
だからこそ、先人がこれまで培ってきた技術や遺産を敬意も無く“時代遅れ”と言い放ち、ファンの思い入れを“異常な愛着”だの“ただのオタク”なんて見下した物言いが出来るんでしょう。

私達は・・・・少なくとも“私”は、これからのウルトラマンがフルCGのゲームみたいな映像になっちゃうかも知れない事や、ミニチュア特撮の醍醐味を味わえなくなるかも知れない事よりも、“こういう考え方”の人に“俺達の円谷プロ”が持っていかれちゃった事が悔しくて、悲しいんですよ。

こういう人は、確かにやり手の経営者や幹部クラスには比較的多いタイプかも知れません(あと、お役所の人とか(苦笑))
恐らく、こういう考え方でなければ会社の運営なんてやってられないだろうし、まして傾いた他の会社を買収して立て直すなんて事は出来ないでしょう。
そういう見地で見れば、やはりこの人の言ってる事は確かに間違ってはいない。
けど、そうであればあるほど、ますます納得がいかないのですよ!

これからの円谷プロが、円谷作品が、ウルトラマンが、どうなっていくのか・・・それは現時点では何も見えてきません。
しかし、実際にモノを作っていくのは“現場の人間”です。
現場の人間が、どう“現場の意地”を見せていくかが全て・・・ではないでしょうか?
これまでの先人達が、皆そうしてきたように・・・・

作品は会議室で作ってるんじゃない、現場で作ってるんだ!
[PR]
by yaskazu | 2007-10-21 23:57 | 特撮 | Trackback | Comments(7)
トラックバックURL : http://yaskazu.exblog.jp/tb/6642553
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by tomoko at 2007-10-22 13:44 x
 この社長さん、私が昔の職場でよく見た、「もうアナログは古いよ、これからはパソコン、デジタル!」と言ってガハハと無責任に笑っていたおじさん上司とイメージが重なるんですよ。現場はおろか、CGとミニチュアそれぞれのメリットやデメリットのバランスはわかっているのかも不安です。
Commented by yaskazu at 2007-10-22 23:42
>tomoko様
一応、デジタル関連の専門の会社みたいだから、さすがにそういう極端な考えはしないだろうと信じたいのですが、あの発言聞く限りじゃそういう風な印象持っちゃいますよねぇ・・・(^^;
てか、専門であるが故にその分野の事しか目に入らないって事もありそうで、それが“策士策に溺れる”な方向に行っちゃわないかって方がむしろ心配です。

あと、本文を少し補足すると、ミニチュアや大掛かりなセット組んでって特撮をTVシリーズで毎回やるよりは、確かにデジタルで補える部分はそれ利用した方が予算的には軽減できるかも知れません(実際「戦隊」なんかはそれやってる訳だし)
ただ、それこそハリウッド映画や実写と見紛うようなリアルなゲームみたいなCG画像を作ろうと思えば、たった数分単位のものを作るだけで、その手間暇や時間、それに“安くできる”と豪語してる予算等も、これまでの「ウルトラ」の何話分か位は軽くいっちゃうと思うんですがね?
その辺りの、シロウトですら疑問に思う事を認識していないんじゃないかって辺りにも、この人に疑心を持たずにはいられないんですよね。
Commented by なつめ at 2007-10-23 07:51 x
ウルトラマン、出光とかいろんなところでバイトしているのを見ると泣けてきます…。本当に、デジタルっていっても最後の最後は職人技なんですよね。そこんとこまるで見えてない発言ですものねぇ…先が思いやられるよう。CGよりミニチュアがいいなんていうオタクですが何か!?
Commented by at 2007-10-23 10:13 x
円谷の経営破たんの一因は伝統技術や完成度に固執した云々の他に、経営側が版権や宣伝、イベントなどの展開を上手く扱えずに儲けられるところで儲けることができなかったことにもあるような気がします。それを「ミニチュアは古い」だのと現場だけにしわ寄せさせているような社長さんの発言だから不快なんですよね。しかもあの社長さん、ウルトラマンというブランドにしか目がいっていない。円谷の持つ歴史や知識、技術に全くリスペクトがない。建前でもあっていいと思うんですけどねえ。何か円谷に対して怨恨でもあるのかなと勘ぐりたくなります。
Commented by yaskazu at 2007-10-23 21:06
>なつめ様
そう、そこなんです。
アナログであってもデジタルであっても、結局は作っていくのは人間なな訳で、技術は勿論の事、そこに如何に血を通わせられるかってところが大事なんですよ。
・・・と、こういう精神論とかもこういうタイプの人には一蹴されそうですが(苦笑)

>>CGよりミニチュアがいいなんていうオタクですが何か!?
ここにも同じ意見の中年オタクがいますが、何か?(w
Commented by yaskazu at 2007-10-23 21:36
>つ様
円谷の商売下手はシロウト目に見ても明らかでしたからね(^^;
映画の宣伝なんかは特にそれが顕著に出ていて、なんでもっと客が“観たい”と思うようなキャンペーンとか出来ないのかと、いつも感じていました。
そういう点で言えば、確かに東映は上手いし、特に某S倉Pの宣伝の展開は天才的だと思いますよ。

>>ウルトラマンというブランドにしか目がいっていない
それは私もかーなーり気になりました。
便宜上的な面もあると思いますが、もう少し“円谷ブランド”そのものに対する御自身の考えとか思いとか、そういうものを語ってほしかった。
それがないからこそ、余計にこの買収劇を“単なるビジネス”としか思っていないとしか思えないんですよね。
Commented by yaskazu at 2007-10-23 21:37
>>更に補足
私が最初にこの会見の映像見た関西ローカルのバラエティには、実はゲストにオタキングこと岡田斗司夫さんが出演されていました。
元々は例のダイエットの関連でのゲストだった様ですが、当然この話題にも触れられてて、やはりこれまでの経営のいたらなさを指摘されていました。

あともう少し頑張れていれば、赤字の元として挙げられてた着ぐるみやミニチュアを、記念館みたいなのを作って展示するって展開も出来たはずなのに、そこが惜しいという趣の事を言っておられました。
また岡田氏の見解では、2〜3年後にはなんとか持ち直すんじゃないかと言う事でしたが、オタキングの見解だからちょっと信じてみようかなとも思いましたけどね(^^;
<< 首が飛ぶ話とか、土、日特撮07... 電王.第37話 >>