人造人間再起動・2
少し間が空いてしまいましたが、『キカイダーREBOOT」の感想の2回目。

本当は、連続で書ければいいのですが、何だかんだで、どうしてもこういうスパンになってしまいますが、気長におつきあい願えれば幸いです。

てことで2回目は、前半ストーリーの面から、ツラツラと・・・

前回同様、エントリーの性質上“ネタバレ”を含みますので、未見の方はご注意を・・・

では本文。



とは言え、劇場で観てから既に10日以上経ってるため、記憶がかなり曖昧になってるので、色々“スカタン”かますかも知れませんが、そこはご容赦(^^;

まずこの映画のストーリーですが、以前当ブログで紹介した松岡圭祐氏の小説版は、この映画の初期案がベースになっていると、角川の井上伸一郎プロデューサーがツイッターで明かされていますが、確かに幾つかの共通点が見受けられます。

小説版の方は、各設定やキャラクターの外見的な描写等が、TVシリーズの「人造人間キカイダー」寄りの(ギルの風体とか、安藤三男さんの姿が浮かんできそう(笑))ものになってるものの、全体の世界観や漂うムード、キャラクターの内面的な造形&描写は、完成した「キカイダーREBOOT」に、概ね近い印象を受けます。

初期案を元に、文字媒体として内容を膨らませ、詳細な描写で表現したものが小説版で、2時間弱の映像媒体として成立するよう、逆に“ぜい肉”を落として、設定や世界観、物語を練り直したものが、映画としての「キカイダーREBOOT」といった感覚で、ある意味旧TVシリーズと石ノ森原作コミックの関係に類似してるのかもしれません。

そういう意味では、小説を踏まえた上で映画を観たり、映画の後で小説を読むなりすると、色々と違う発見があるかも知れません。
自分はあの小説は友人に借りて読んだのですが、映画観てまた読み直したくなったので、改めて購入を検討しています。 

さてこの映画、実際に観てみると、前半と後半で少し違った印象を受けるかもしれません。

前半は、世界観やキャラクターの描写等が、比較的丁寧に描かれていて、ジローとミツコ、マサルが追っ手から逃れるため“逃亡劇”を繰り広げるのがストーリーの中心になっていて、ある種の“ロードムービー”的な旅情感を醸し出してます。

その中で、文字通り“プログラム”としてミツコ達を守っていたジローが、2人と触れ合ううちに人間的な感情を育んだり、最初はジローを拒否していたミツコが、ジローに疑似恋愛的感情を持つ過程、マサルが機械であるジローに対し(例えそれがプログラムであっても)“父の匂い”を感じ、慕ってゆく姿が、丁寧に描かれてます。

ここは、TVシリーズの「人造人間キカイダー」でも、同様の要素があり、前述の小説版の中の、この逃亡劇的シュチュエーションの描写や構成が、映画の印象と重なるところが多く、おそらくここは、制作側も最も大切に描きたかった部分だったのではないでしょうか?

ミツコが、本当の恋愛ができずに“恋愛コミック”に没頭したり、マサルがゲームばかりやってるような“現実逃避”的傾向のある姉弟で、その根底には、研究のため自分たちを顧みなかった父、光明寺博士への愛憎が背景にあるというのは、この映画での新しい解釈ですが、それが父が作ったジローとの、人と機械を越えた信頼が育まれる過程に、説得力を持たせています。

これも、小説に同様の描写が見られ、企画当初から“描きたかった”部分である事が、伺えます。

また、小説版では“ダーク”やプロフェッサー・ギルの存在は、TV版やコミック版に近いものになってますが、映画の方は、本来は政府がロボットの技術を“災害対策”“原発処理”といった、平和利用として進めていた“ARK(アーク)プロジェクト”という国家政策の名称であり、光明寺博士も、ギルバート神崎(ギル)も、そのプロジェクトの一員ということになってます。

その“ARK(アーク)プロジェクト”が、総理大臣を出し抜いた防衛大臣の策略により、ロボットの軍事利用目的での運用(集団的自衛権なんて単語も出てくる)に方向転換されたものが“DARK(ダーク)プロジェクト”であり、その過程で、計画に反対する光明寺博士を暗殺し、プロジェクトの責任者に祭り上げられたのがギルバート神崎で、その時に授かった肩書きが“プロフェッサー・ギル”という設定になっています。

こういった現実の“時事ネタ”を、特撮ヒーロー物のようなジャンルの作品に盛り込む事を、あまり快く思わない方もおられますが、本来オリジナル(特に石ノ森コミック版)のダークも、ロボットを戦争や犯罪に利用する事で、利益を得ている組織だし、悪の組織に政治や国家が加担、或いは協力関係にあるというのも、石ノ森作品には、結構定番の要素だったりしますからね。

そういう意味では、キカイダーだけでなく、広い意味で“石ノ森作品”に対するオマージュと捉えることもできるし、例え僅かでもリアルな設定や世界観を持たせて、特撮ヒーロー物を、一般向け作品に引き寄せたいという、作り手の狙いや願いがあったと思われ、多少荒削りではあるけど、ある程度は成功してたと思います。

「キカイダー」のキモのひとつとも言える“良心回路”の設定は、戦闘能力の高いキカイダーが、暴走して人を傷つけたり、無闇な破壊活動を行わないための“ストッパー”的役割を果たすもののようで、原作とも旧TV版とも、また小説版とも、少し違った解釈になっています。

但し、良心回路がジローの“心”そのものである事に変わりはなく、前述の逃亡劇を繰り広げる時、ジローがミツコのために採った“楓の葉”に、感謝しつつもひと言告げる
「生きてるものは傷つけない方がいいよ、機械じゃないんだから」
という言葉が、より良心回路の働きを促進するような描写があり、ジローの心が人間に近づくと同時に、逆に苦しめることにもなります。

この映画にはいわゆる“アンドロイドマン”が登場せず、武装した人間の“兵士”が戦闘員的な役割を果たすのですが、人間である彼らに対し、ジローは当然“とどめ”はさせず、殴る寸前で拳が止まり、逃走を許したり・・・

そして、ハカイダーとは別の意味での“宿敵”となる“マリ”に対しても、戦闘で有利に立ち、拳を振り下ろそうとした瞬間、マリがなんとも“切なそうな”表情を見せたことが良心回路に影響したのか、フリーズしたように攻撃できなくなったところを“返り討ち”に遭い、結果敗北して片腕を捥がれ、ミツコもマサルも攫われてしまうことになります。

この時の、マリを演じる高橋メアリージュンの、少し怯えて、訴えかけるような表情がなんとも絶妙で、もしかしてビジンダーを出さずに“マリ”で通したのは、これをやるためだったんじゃないか、と思ったくらいです。

また、ハカイダーに対しても、その頭部に収まっているのが“人間の脳”だと認識し
「お前は人間じゃないか」
と、戦いを拒否したりと、良心回路がジローにとっての“心”であると同時に、大きな“枷”になってるような描写になってます。

そして、伴大介氏演じる“前野究次郎”が、ジローの最後の決断の鍵となる言葉をかけるくだりは、クライマックスのジローの“決断”に関わる、大切なシーンとして描かれていて、前半と後半を繋ぐ、ターニングポイントにもなってます。

しかし後半、特にハカイダーが登場してから以降は、一気に全体の速度が上がり、“アクション物”としての要素が強くなり、それまでのムードが一転するような感覚になります。

いやまぁ、良くも悪くもハカイダーが出ると同時に、ヤツが全部“持っていっちゃう”の感覚も、ある意味旧作のオマージュととる事もできるし、結局ハカイダーというキャラクターが、それだけ突出した存在である、ひとつの証しなのかもしれませんがね。

それ自体は、作品のメリハリになっているのですが、せっかく前半で丁寧に描いた世界観や、キャラクターの心理描写、思わせぶりな“前振り”等が、まるでハンマー投げの如く、一気にブン回されてどっか行っちゃったようなところもあり、否定的、批判的な意見を持つ方にも、その辺りの構成や脚本の“荒さ”を指摘されてる方も多いようで、確かにそれには、自分も色々と感じ入るものはあります。

もともと、ミツコたちが逃亡する理由となった、マサルの身体に隠されたあのチップには、結局何が記録されてたのかが、イマイチよく分からなかったのは、どうしたものかと思うし、第一それはマサル君じゃなくて、アキラ君だろうとか、“大人げない”突っ込みを入れたくなったりとか・・・(^^;

ただ、それらも含め、全てを回収し、より完璧な作品を求めたら、それこそハリウッド映画並みの予算と製作環境、せめてあともう30分くらいの上映時間が欲しいところで、そこが今の日本の映画界・・・特にこういう“特撮ヒーロー物”の、限界なのかもしれません。

そう考えれば、むしろよくここまでやったなと思うし、今後の課題も見えてくる気がします。

否定的、批判的になる事自体は構わないけど、ならどうすればいいか、ファンとして何が出来るのかとか、どう支持していくのかを、前向きに考えないと、日本の特撮物や業界自体が、どんどん衰退していくんじゃないでしょうか?

てことで、また長くなってしまったので、今回はこれくらいに。

次は、ハカイダー登場以降の後半と、各キャラクターの話を中心に考えてますが、また数日以上の間が開くと思いますので、御容赦願います。

人造人間キカイダー The Novel (角川文庫)

松岡 圭祐 / 角川書店



RAH DX キカイダーVer.1.5

メディコム・トイ


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by yaskazu | 2014-06-10 22:19 | 特撮 | Trackback | Comments(0)
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