浪漫譚
先日、映画「るろうに剣心」を観てまいりました。

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元々原作コミックの「るろうに剣心 ー明治剣客浪漫譚ー」が好きで、アニメ版も毎週観ていたことや、この作品が切っ掛けで幕末物に興味を持ったこともあり、実写映画化という話を聞いたときから、俄に注目していました。

いや、単に実写化ってだけなら、昨今の漫画やアニメの実写化ブームに乗っただけって考えたかも知れませんが、実は自分はアニメ版には、少なからず不満があって、「剣心」みたいな題材は、映像的にも内容的にも、むしろ実写の方が意外とハマるんじゃないかって、当初から思っていたんですね。

但し、それにはある程度予算も手間も融通が利き、贅沢な作り方が出来る条件や体制が必要になるだろうし、今の日本でそれが出来そうなのは、NHK大河くらいしかないだろうなとか・・・

また、剣心を演じれる役者は、連載当初は思い浮かばなかったものの、「仮面ライダー電王」で佐藤健くんを見たとき(良太郎のキャラクターの影響もあっただろうけど)その若さに似合わぬ確かな演技力に感心し、10年後の佐藤健なら、もしかしたら緋村剣心を演じられるかもしれないなぁとか・・・

まぁ、そういうことを、本当にもう“妄想レベル”で、漠然と考えていたのですが、いざ実写映画化って話が具体的になったとき、監督始めスタッフ&キャストは、その多くがNHK大河の「龍馬伝」の顔ぶれだったり、剣心役は佐藤健だったりで、正に自分の妄想が現実になったような気分(笑)

これは、やっぱどんなものなのか、自分の目で確かめない訳にはいかんよなぁと
いうことで、他の幾つかの候補の中から、結果的にこれを選んで観たという次第。

と、例によって前置きが長くなりましたが、以降映画の雑感を。



漫画やアニメの実写化というと、何かと物議を呼ぶものなんですが、前述のように自分は「剣心」は実写の方が合うんじゃないかと考えてたこともあって、その辺りは抵抗なく楽しみことができました。

元々自分はそういうのには比較的寛大な方だと自負してるし、そもそも媒体が違う物を、単純に比較して論ずること自体馬鹿げてますからね。

自分がどうしても、心情的に実写化を受け入れられなかったのは「あしたのジョー」くらいなんですが、それに関しては話すと長くなるだけので、今回はその話は割愛(^^;

まずは1本の映画として、そして「剣心」の映像化としては、及第点以上の出来映えで、素直に“面白い”作品だったと思います。
何より、あの長い原作のエッセンスを、実に手堅く、上手く纏め上げたなと・・・

確かに、その“手堅さ”が、逆に物足りなく感じる面はあるし、原作やアニメと比べて云々っていう向きのことをいう人の気持も、あながち分からなくはないけれど、それを言ってしまうのは、それこそ極度の原作信者(←この表現は好きじゃないけど、ここは敢えて)な人達の揚げ足取りでしかないでしょう。

佐藤健の剣心は、自分が思っていた以上にハマッていたと思うし、原作のイメージを壊すことなく、更にそれを一歩越えた“佐藤健の緋村剣心”になっていた辺りは、電王当時に私が見込んだだけのことはあるなと(←何様だお前は(^^;)

他のキャラクターも、原作のイメージは踏襲しつつも、いい意味で漫画的になりすぎないで、実写映画の中のリアルな登場人物として成立していたと思うし、演ずる役者さんも、そのキャラの魅力や本質を、それぞれ存分に引き出していたと思います(これは脚本や演出による部分も大きいけどね)

代表的なのは、吉川晃司の鵜堂刃衛や、江口洋介の斎藤一だろうけど、やっぱ今度の映画の中で、そういう点で特筆すべきなのは、香川照之の武田観柳でしょうね(笑)

この人の“怪優ぶり”は、今更言うまでもないことだけど、今回もそれは遺憾なく発揮され、この映画の監督の大友啓史の「龍馬伝」で演じた“岩崎弥太郎”同様、完全に主役を食っちゃう勢いの強烈なインパクトを、観たものの脳裏に焼き付けちゃいましたよ(^^;

恐るべし、香川照之(笑)

個人的には、青木宗高演じる“相楽左之助がお気に入りで、自分の中では一番原作のイメージに近かった・・・と言うか、もし“左之”が本当にいたら、きっとあんな感じの男だろうなっていう、リアルな存在感がありました。

原作と最も設定が変わって登場したのが“外印”でしたね。
外印は原作では“爺さん”だったし、人間の死体を原料にした絡繰り人形を操り、そこに美学を見出すという“サイコキャラ”でしたが、映画の外印は綾野剛演じる“イケメン”だし、銃や短刀使って戦う辺りは、むしろ御庭番衆に近いイメージでしょうか。

同様の事は戊亥番神にも言えるのですが、そもそもこの2人は、原作では観柳の配下ではないし、キャラのイメージも随分と違うんだけど、ただ今回の映画化に際し、原作の“観柳編”で登場し、後に重要キャラとなる“四乃森蒼紫”と、隠密御庭番衆が割愛された分、その役割を外印と番神に振り分けていたような印象を受けました。

もし、原作同様に四乃森蒼紫が登場して、演ずるのが綾野剛の予定だったと仮定すれば、なんかあのキャスティングやキャラ変更も、納得いっちゃう気がするんですよね。
そう考えると、綾野剛演ずる四乃森蒼紫は、ちょっと観てみたかったかも・・・

ただ、四乃森蒼紫も隠密御庭番衆も、確かに中途半端なカタチでは出さない方がよかったし、それもあっての設定変更だったのかもしれませんね。

仮に続編が作られ、四乃森蒼紫も登場するなら、その時は是非“小西遼生”に、あの“白いコート”でお願いします、ということで(笑)

逆に、映画では多分切られると思っていたキャラが、多数出てきたのは別の意味で意外だったし、嬉しかったです。

“署長”さんなんかは、斎藤洋介さんが演ずる事で、あの“目立たないのに存在感がある”(笑)という、独特の雰囲気を醸し出していたし、“赤べこ”の妙さんや燕ちゃんまで登場とは、なんともファン心理を掴んでるというか、分かってらっしゃるというか(^^)

その妙さん、どこかで見たことあるなと思ったら、演じてる平田薫さんは「マジレン」の山崎さんじゃないですか!
これはもう、ただでさえ特撮ファン的に“ツボ”なキャスティングの多いこの映画の中でも、ツボ中のツボなんじゃないかと!

ま、個人的には剣心実写化したなら、妙さんと冴さんは三倉茉奈&佳奈ちゃんでって思ってたんですが(笑)

因みに山崎さんと言えば、観柳の部下の1人に、ヤマジュンこと“山崎潤”さんがしれっと出てたのですが、あまりにしれっとすぎて、鑑賞中は気づかなくて、パンフレット見て初めて知ったという・・・(^^;

けど、一番予想外だったのは、清里明良と、後ろ姿だけとは言え、巴が登場したことでしょう。

この2人に関しては、もし語られることがあったとしても、その存在を匂わす程度だろう思ってたら、清里なんかはしっかりと名前まで出てきたし、剣心の十字傷が、清里とその妻になる筈だった女、雪代巴(巴は名前までは出なかったけど)によって付けられたことまで言及されたのは、正直驚きました。

こうなると、巴が正式に登場して、剣心と巴の“あのエピソード”が描かれる“続編”を、ファンとしては期待せざるを得ないじゃないかと!

巴とのエピソードは、十字傷に纏わることだけでなく、剣心の“不殺(ころさず)”の誓い、つまりは緋村剣心という人物の、延いては「るろうに剣心」の物語の、中核に関わると言っていい、非常に重要且つ繊細な部分だから、もし映像化するなら、本当に大切に、丁寧に、描いてほしいところですよね。

昨今”不殺(ころさず)”を唱える主人公は幾つか見受けられますが、その理由となる部分に説得力がないと、それこそ単なる奇麗事だったり、偏った思想的なものに陥ったりして、場合によっては不愉快にすら感じてしまうものです。

緋村剣心の“不殺(ころさず)”が他と一線を画するのは、表面的な心情や理念といったものではなく、その本質は“贖罪”であり、しかもそれは剣心自身が、自らに課したものであること。

その手と血刀で奪った、無数の命と人生の全ての重みを背負って、生涯を贖罪のために生きる、その誓いとしての“不殺(ころさず)”であり、刃と峰の逆転した“逆刃刀”はその証し。

普段の、飄々とした風貌や人柄からは、想像もできない過酷な過去と、壮絶極まりない覚悟の上に成り立ってるからこそ、剣心の“不殺(ころさず)”は、説得力を持ってるんですな。

そして、その根源にあるのが、巴との物語だった訳で、それが明かされた後に、原作の第一幕や、この映画の中でも、ひとつと象徴として語られる、剣心の
「剣は凶器、剣術は殺人術、どんな奇麗事やお題目を口にしても、それが真実。
薫殿の言ってることは、一度も自分の手を汚したことのない者がいう戯れ言でござるよ。
けれども拙者は、そんな真実よりも、薫殿がいう甘っちょろい戯れ言の方が好きでござるよ。
願わくば、これからの世はその戯れ言が、真実になってほしいものでござるな」

という言葉が、一層重みと深みを持って聞こえてきます。

むしろ、その巴との哀しい物語・・・原作でいう“追憶編”を知らなければ、「るろうに剣心」という作品を、半分も描いてないんじゃないかってくらい、本当に重要なエピソードだから、もし映画の続編が作られるのであれば是非これを中心にやってほしいなと思うのは、ファンの共通した思いなんじゃないかな?(勿論“京都編”は、エンターテイメントとしては最高なんだけど、あれこそ2時間程度には絶対納まらないしね(^^;)

にしても、あの後ろ姿の巴さんを演じてたのは、いったい誰だったんでしょうか?

なんかまた、色々長々書いてしまいました。

他にも、昨今主流のワイヤーやCG多用でもなければ、いわゆる“チャンバラ”でも、格闘ゲ−ムのような段取り的なアクションではない、リアルな剣技と体術に拘った、“真の闘い”を感じさせるアクションの描き方とか、龍馬伝を彷彿させる、当時の空気を感じさせる映像面の演出とか、原作と比べて若干甘いながらも、エッセンスは十分引き出してる脚本とか、色々語りたいことは多々ありますが、それやってると、いつまで経っても終わらないので、今回はこれにお終いにします。

原作ファンも、そうでない人も、この映画で初めて「るろうに剣心」に触れるという方も、満足度は高い作品なのは確かだと思うので、興味があって未見だという方は、是非一度ご覧になることをお奨めします!

るろうに剣心─特筆版─ 上巻 (ジャンプコミックス)

和月 伸宏 / 集英社


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by yaskazu | 2012-09-21 23:50 | 映画 | Trackback | Comments(0)
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