当ブログでも何度か触れた事のある、大沢在昌氏の小説「新宿鮫」シリーズの最新作「絆回廊」が、単行本化されていて、ここ数日空いた時間等を縫いながら、少しずつ読んでました。
買ったのが発売日の6月2日で、読み終えたのが昨日、6月13日の就寝前だったから、11日間かかった訳だけど、これは私が元々読むのが遅いってこともあるんだけど、小説に限らず漫画や、場合によっては雑誌やムックなんかでも、本はじっくり読みたい体質だから、でもあるんですよ。 この作品、元々「ほぼ日刊トイ新聞」に、ネット連載という(このシリーズとしては)少し変わった形態で発表されていて、それを知らなかった私が読んだのは既に終盤部分、つまり“オチ”を最初に読んでしまうという、このテの小説としてはある意味痛恨のミスをやってしまった訳で・・・(^^; でも、だからこそ、そこに至るまでに何があったのか、何故“ああいう事態”になってしまったのかを、最初からしっかりと確かめるため、時間をかけて読んでたってところも、少しあります。 「新宿鮫」シリーズをある程度熟知されていて、この「絆回廊」を既読の方はご存知でしょうが、本作ではシリーズ最大とも言える“大転換”となる出来事が起こります。 や・・・正直言うと、それ自体は某大人気刑事ドラマの映画版と、意味合い的に若干“被ってる”部分もあるし、シリーズ読み続けているうち、いつかこんな日がくる予感めいたものはあったのだけど、実際に本当に“そうなってしまう”と、やはりショックは大きかったですね(^^; 元々「新宿鮫」は、一匹狼のはみだし刑事が、たった一人で事件を解決していくという、こういうジャンルの作品ではもっとも“ありがち”なものを、嘘くさい荒唐無稽なものにしないため、その設定や背景、物語を極めて緻密に描く事で、それまでにないリアル感を見せた事が、ヒットした最大の理由でもあり、また以降のこのジャンルの小説やドラマ、映画等にも多大な影響を与えた作品でした。 ただ、それは言い換えれば本来「新宿鮫」は、鮫島という“一匹狼のスーパー刑事”の物語でもあった訳で、実際初期作品の鮫島は何者にも物怖じしない、ギラギラ輝いていた印象がありました。 しかし、シリーズを重ねるに連れ、一番大切な人、理解者、協力者、決して相容れなくも認め合うライバル、根底では同一のものを持っていただろう仇敵・・・ そういった人達との“繋がり”が増える度、鮫島の人間味がどんどん増していき、それはそれで“シリーズ物”としての楽しみである一方、それが“弱さ”に転化していった印象も、確かにありました。 本作の鮫島は、正にそれが強く表れていて、なにか“守り”に入ってしまった感があり、そしてその事が皮肉にもあの結果を・・・最悪ともいえるカタチで呼んでしまったように感じました。 物語的にも、リアルである事を追求するなら、鮫島のような刑事が存在する事自体があり得ないため、そこを収めようとすればするほど、鮫島が“大人しく”なっていかざるを得ない部分もあったように思います。 さて、前作でも物語的にはひとつの転換期を、本作でそれ以上の大転換を迎えた訳ですが、作者の大沢在昌氏は、鮫島が鮫島たりえた“大きなもの”を2つも奪う事で、シリーズ初期の“孤独な一匹狼”のギラギラした鮫島を蘇らせようとしてるんじゃないかと、自分的には感じています。 この「絆回廊」の物語自体も、多方面から指摘されてる通り、かなり「え?」という、なにか“放り投げた”ような終わり方をしていて、そこらも含め、次作以降、どうなっていくのか・・・ 非常に楽しみです(^^)
by yaskazu
| 2011-06-14 23:56
| 日々の戯れ言
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