裏方
特撮や一般のドラマ等の実写作品の場合、役を演じる役者さんや、登場する各キャラクターそのものが“表”の存在だとすると、それを作品として仕上げるスタッフは“裏方”と総じて呼ばれる存在ということになる。

ならば、“表”にでるものが、最初から人の手によって作り出された“絵”であるアニメーションの場合、それに関わる仕事はそれ自体が、最初から既に全て裏方と言えるかも知れない(声優さんにしても、そういう意味では裏方だろう)

とは言え、それでもアニメーターや演出、監督やプロデューサーといった存在は、比較的ファンからの注目も浴びやすいし、中にはそうい人たちから、ある種のスター的人気を得る人が出てく場合も、決して珍しい話ではない。

しかし、本当の意味での“裏方”と呼べるような、後ろから、陰から、作品作りを支えてる、縁の下の力持ち的な人たちは、他にも沢山いらっしゃるにも拘らず、そういう人達にスポットが当たるという事は、あまりないんですよね。

自分は◯◯さんの描くキャラクターや、XXさんの演出は大好きだ、という人はいても、△△さんの編集は正に職人技だ、□□さんのSE入れるタイミングは絶妙だ、なんて褒め方をするファンには、自分は殆どお目にかかったことはありません(いや、いるにはいるんだろうけど、それはファンとかマニアとかとは、またちょっと違う層になっちゃうし(^^;)



先日他界された“中村光毅”さんが携わってられた“美術監督”というのも、アニメの世界ではそういう、本当の意味での“縁の下の力持ち”的な、なくてはならない分野のお仕事です。

これは実写の美術監督も同じと言えるんですが、脚本や演出の意図を汲んだ上で、その舞台となる場所を設計し、必要となる場所を作り上げる。
実写の場合はセットを組み、必要なら大道具や小道具も揃えたり、作ってしまったりする場合もある。

アニメの場合も、基本となる美術設定・・・ま、キャラクターやメカでいうところの設定表とかデザイン画に当たる物ですが、それらを演出や作画、時に脚本等との意図を汲み、或いは打ち合わせた上で、自らのイメージとセンスで描き上げ、背景美術の各担当は、それらを元に各シーン、各カットの背景を描き出す。

これはアナログ時代の、紙にポスターカラーで描いていた時も、デジタル化された現在でも、基本的には変わらないコンセプトです。

更にアニメの場合、実写のようにセットを組むという事はできないし、勿論野外にロケに行く事もできないので、例え同じ場所が舞台であったとしても、そのシーンやカットの分、基本的に全て描く必要もあります。

俯瞰なのか、煽りなのか、アップショットなのか、ロングショットなのか、朝なのか、昼なのか、夜なのか、野外なのか、屋内なのか、屋内ならどの部屋なのか、部屋の中で窓から自然光が入ってる昼なのか、夜で照明で照らされてるのか、灯りのない暗い部屋なのか・・・

そういう、ありとあらゆる場合のシーンやカットに沿った背景が必要となる訳で、その都度描く事になる訳です。

勿論、流用やバンク等もあるけれど、実写のレギュラーセットのように、一度作れば最後まで使えるという訳にはいきません。

よく、アニメーション映画をPRするとき、“作画枚数何万枚”とかいうのをウリにしますが、それは最終的な動画の枚数であって、そこにいきつくまでのレイアウトや原画、修正原画等、更にボツになったものとか、アナログ時代なら最終段階であるセル画の数(この際だからセルへの転写用のカーボンも言っとくか)等を入れた総数を入れれば、それこそ天文学的な数の絵が描かれている訳です。

同じように、背景に使われる絵も、その作品のカット数は最低限描かれてる訳で、それらは背景美術さんと呼ばれる専門の人達によって描かれており、それをチェックし、纏め上げていくのも、美術監督の仕事になります。

文字通り、キャラクターの“背景”となる絵という事で、あまりメディア等では大きく扱われない場合が多いですが、実はキャラクター以上に作品の“世界観”や“空気感”、ビジュアル的な“方向性”をも決定づけるような、非常に重要なお仕事なんですね。

また、中村光毅さんは“メカデザイナー”としても活躍されてました。
今でこそ、メカデザイナーという肩書きの職種が独立して存在するのが当たり前ですが、昔はこういうのも美術さんの仕事だったもようです。

実はこれは中村さんに限らず、日本のアニメーションの黎明期には、美術さんがメカやアイテム類、小物類のデザインをされるという事は、結構あったようです。
あくまで私の推測ですが、これは先に述べたように、実写の美術さんが大道具や小道具を揃えたり、作ってしまったりするのも仕事の内である事が、アニメ界にも派生していた名残りだったのかも知れません。

ただ、その中でも中村光毅さんのメカデザインのセンスは、群を抜いていました。

実はアニメの美術さんというのは、“絵描き”としての力量やセンンスが、アニメーター以上に要求される仕事でもあります。
つまり、元々並外れて絵の上手い人でもあった訳です。

タツノコプロの黎明期から最盛期にかけて、私ら世代には忘れられない“タツノコメカ”の数々・・・

マッハ号、ゴッドフェニックス&各Gメカ、フレンダーの各ビーグル、ブルーアース号、ポリマーメカ、etc・・・

あの、直線と流曲線が絶妙に組み合わさった、“カッコイイ”という形容詞がこれほどまでにピッタリくる数々のメカは、この人の手によるものだったんですね。

そして、中村さんの事実上の弟子筋に当たるのが、あの“大河原邦夫”さん。
一時期のタツノコプロのメカは、正にこのお二方によって支えられてたようなものです。

少し脱線気味になったけど、つまりアニメの美術監督というのは、単純に背景を描くだけではなく、非常に多岐に渡る仕事だという事を書きたかった訳です。

日本のアニメ界の黎明期から、ずっと仕事を続けられてきた、中村光毅さんのような方がこの世を去られた事は、非常に淋しいし、大きな損失です。

ただ、それを単に訃報として扱うのではなく、これを機に(アニメに限らず)あまり表舞台に出る事のない、それでいながらとても重要でなくてはならない仕事をされている、本当の意味での“裏方さん”の存在を、少しでも知っていただければと思い、長々と書いてみました。

中村光毅さん、安らかにおやすみください。

マッハGOGOGO DVD-BOX

ジェネオン エンタテインメント


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by yaskazu | 2011-05-19 21:16 | アニメーション | Trackback | Comments(0)
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